銀行総務特命 池井戸潤
ともみです。
本を一冊読み終えました。
池井戸潤さんの、銀行総務特命。
半沢直樹など、銀行を舞台にした作品を数多く出版している池井戸潤さんの作品です。
銀行内の不祥事について調査する、いわば銀行の警察のような部署、総務部特命課が舞台である。
銀行のスキャンダルにつながらないように、世間に明るみになる前に、事前に銀行内で調査を進める部署という。
特命な案件を扱う部署である。
「特命」とはどういう意味だろうか。
この銀行の部署名としても出てきた特命。
人気ドラマ相棒の水谷右京のいる部署も特命。
読んで字のごとく、特別な命令を受けて行動する部署のことです。
さて、そんな総務部特命課の銀行員、指宿が銀行内のさまざまな問題に対処していくこの小説。
すべて読み切りの短編で、8つの話が含まれている。
またこの、銀行総務特命という小説はドラマ花咲舞が黙ってないの原作の1つにもなったそうです。
短編小説はどの話も面白いです。銀行内特有の派閥争いのような話もあれば、誘拐事件や不法侵入などの刑事事件も絡むようなハラハラする展開のものもあります。
次はどんな問題に直面するのか、その話はどうなるのか、と次々と読み進めたくなる作品です。
内容が面白いのはさておき、この本の味があるな〜と思った部分があります。
それは1つ1つの短編小説の終わり方です。
問題に対して真相が明るみになってきた最終章、「あ、原因はこれだったんだ」「犯人はこの人だったんだ」と話の流れで推測できたところで、ばさっと話が終わります。
よくある小説だと、犯人が見つかったら刑事が問い詰めるシーンや犯人が自供するシーンを書き、最終章は主人公のその後を描く、といったパターンが多いです。
しかしこの小説は、それをしません。
続きは想像できるでしょ、書くほどのものじゃないよ、と言われているような気がしています。
作者の表現方法で最後まで読みたいというじれったさもあり、最初の方は、え!?これで終わり?もうちょっと書いてよ〜〜って思ったけど、短編を読み進めていくうちに心地よくなってきて、こういうのもいいな、味があるなと感じるようになりました。
それに、読み手によって多様な物語の続きを想像することができるなと感じました。
このあとこの人はどんな目に合うんだろう、ちゃんと自白するのかな、どういう問い詰め方をするんだろう。
色々な面から想像膨らみ、読み終わった後も興奮冷めやまない状況、そんな感情を持っていました。
作者にその答えを聞きたいような、聞きたくないような、、そんな感情もあります。
作品の内容に触れると、池井戸潤さんの作品にはいつもハラハラさせられます。
銀行を舞台にしている作品では、色々な調査や資料の提出などなら期限が設けられています。
それまでにこの主人公は有力な情報を得られるのか、得られるんだろうけど、どうやってそんな奇跡を起こすのか、ハラハラします。
そして、主人公の権力に負けない強さや正義感の強さが好きです。銀行でよく描かれる派閥争いや上司への媚売りなどがなくスカッとします。
でも本人も清廉潔白なわけではなく、裏の情報源を持っていたり、極秘捜査をしていたり、腹黒いところがあるところもなんだか好きです。
人間味が感じられるからでしょうか。勝つためには正々堂々だけでは太刀打ちできないものがある。その執念に興奮させられ、応援したくなるのだなと、感じています。
以上、感想でした。
ぜひ読んでみてください♫